「脱帽」と「割り切り」。日本代表の10番・香川真司が語ったUAE戦 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「脱帽」と「割り切り」。日本代表の10番・香川真司が語ったUAE戦

落とせない一戦で勝利したハリルジャパン。現代サッカーを模索するなかで10番が見せた表情

明るかったミックスゾーン

「おめでとうございます!」
 公式会見を終えて、ミックスゾーンをいつになくゆっくりと歩くハリルホジッチ監督へ記者たちが声をかける。公式会見を行なっているため、このエリアで足をとめることはほとんどないし、試合によっては記者に目もくれず足早に通り抜けることもある監督だが、この日は違った。
 記者が口々にお祝いの言葉をかけるケースもまれといえばまれだったが、彼らの声に破顔したハリルホジッチ監督は「ありがとうございます」とたどたどしい日本語とともに軽くおじきをし、顔見知りの記者へ握手を求めるほど、リラックスしていた。

 3月23日、ワールドカップロシア大会アジア最終予選のUAE戦は、久保(裕也/ヘント)と今野(泰幸/ガンバ大阪)のゴールで2-0と勝利。昨年9月、ホームでの第一戦で敗れた相手に勝ち切った。試合終了の笛が鳴った瞬間、ベンチに座る選手やスタッフが、両手をあげて立ち上がる。試合に出場していた選手たちの元へ走り、祝い合う様子は、まるで決勝戦を戦ったあとのようだった。それだけ大きな重圧がかかった試合だったということだろう。

「今日は大事な試合だった。本当にここでの勝利が重要でそれ以外は考えられなかったし、本当にみんながハードワークした結果、いい勝利ができました」

 トップ下で先発し、途中交代した香川(真司/ドルトムント)の表情もまた穏やかなものだった。守備に回る時間も多く、彼本来の強みを見せる場面は少なかったが、勝利によってもたらされた安堵感が彼を包んでいた。

 

「守備に関してはみんな本当に規律どおりにできた。今ちゃん(今野泰幸)が相手を潰せていたので、そこは大きかった。相手にビックチャンスを作らせなかった。そういう粘り強くチームで戦っているなかで先制点を奪えて、本当に効率のいい戦いができていたのかなって思います。久保(裕也)の先制点がなにより、チームに勢いと自信を与えてくれました。しかも右サイドでハードワークし、守備もサポートして、攻撃になったら、前線で身体を張ってくれたので。本当に頼もしかったですね」

 現在、ベルギーリーグで活躍する久保を称えたあと、久しぶりに代表復帰し、大車輪の活躍を見せた今野について香川は「脱帽」と評した。

「今日は彼が12人分と言ったら、変ですけど(笑)。すごい運動量でしかも得点を取った。本当にチームで一番素晴らしいプレーだったと思います。今のサッカーに今ちゃんのスタイルはとても活きているし、欠かせないプレースタイルの選手。脱帽ですね」

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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